新見正則・白杉望による下肢静脈瘤のはなしと血管疾患のはなし このサイトについてサイトマップ
       
 

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[詳細]下肢静脈瘤

下肢静脈瘤の診断

下肢静脈瘤の診断方法

視診・触診/ドップラー検査/超音波検査/下肢静脈造影

下肢静脈瘤を疑うことは、一度写真をご覧になった方なら、どなたでも可能です。
しかし、軽症の下肢静脈瘤、皮下脂肪の多い方の下肢静脈瘤、皮膚潰瘍を伴った下肢静脈瘤などは血管外科を専門としていなければ、困難な場合も多々あります。
また、原因である弁不全を有する静脈を特定することは、経験と知識を要します。
視診・触診による診断を確実にするために、ドップラー検査・超音波検査などの非侵襲的な検査(痛くない検査)を行います。

また、通常は下肢静脈造影を施行します。これで確実に深部静脈の開存していること、静脈瘤の原因となっている伏在静脈や穿通枝が判明します。
下肢静脈造影後は、歩いて帰宅できますし、その日に入浴可です。

超音波検査

ドップラー検査

下肢の静脈造影

静脈造影のやり方

 

鑑別すべき病気

(1)深部静脈血栓症

深部静脈が血栓により閉塞するものです。突然の下肢の腫脹により発症するため急性期には比較的診断がつきやすい病気です。
発症早期には、血栓を溶かす治療を入院にて施行します。血栓が限局していれば、手術を併用することもあります。
一方、慢性期には、深部静脈の閉塞による静脈のうっ滞は表在静脈による側副路が発達するため比較的少なくなり、その結果、下肢の腫脹は急性期よりは軽くなります。
しかし、表在静脈の側副路は原発性の下肢静脈瘤としばしば誤診されます。深部静脈血栓症の患者さんから側副路である表在静脈を取り除くことは、通常は症状の悪化を招きます。

慢性期の潰瘍

静脈造影

静脈造影

 

(2)先天性静脈瘤(Klippel-Trenaunay syndrome)

先天性静脈瘤は基本的には帝京大学付属病院で治療を行います。MRIなどの特殊な検査が必要なためです。
先天性静脈瘤の初診患者数は毎年10数人で、5から10人の方の手術を毎年行っています。

Klippel-Trenaunay syndromeとは皮膚血管腫(cutaneous hemangioma, "port wine stains)、外側辺縁静脈(lateral marginal vein)の遺残を伴う下肢静脈瘤、下肢の過形成を3主徴とする症候群です。
症状は外見的な訴えが主で、肢長差は幼少期より徐徐に進行するため、歩行困難が生じることは稀で、立位にて骨盤の位置などを 注意して診察しないと、肢長差を見逃すこともあります。
静脈瘤による症状が強いときは 静脈造影にて深部静脈の開存を確認して、瘤切除を行います。通常Klippel-Trenaunay syndromeに明かな動静脈瘻を伴ったものはParkes-Weber syndromeと名付けられているが稀です。

Klippel-Trenaunay syndrome

皮膚潰瘍・下腿潰瘍

夏井睦先生のご指導に従い(新しい創傷治療ホームページ)2005年より、潰瘍をサランラップで保護し、以下の圧迫治療を行っています。

潰瘍が湿潤環境となり、ガーゼが直接潰瘍にあたることを防止するためです。
静脈のうっ滞を防ぐために、ベット上安静または圧迫治療を行わなければ、この種の潰瘍は治癒しません。

 

 

読んで字のごとく、下腿(膝から下・くるぶしから上)に生じた潰瘍(皮膚の欠損)です。外傷・火傷などでも生じますが、原因不明と診断されているものの多くは、静脈うっ滞によって生じるものです。
下腿潰瘍で悩んでおられる多くの患者さんが私どもの外来を受診され、正しい診断のもと、適切な治療が行われています。

 

診断

診断は静脈のうっ滞があるかないかです。しかし、下腿潰瘍を生じる下肢静脈瘤は重症であり、静脈瘤によって厚くなり・色素沈着を伴った皮膚に隠れて簡単には下肢静脈瘤の診断がつかない場合があります。この場合は、当方でも静脈造影を行い診断の助けにしています。

 

治療

治療の基本は静脈のうっ滞をとることです。ですから、正確な診断が付いていなくても入院し安静にしていれば、下腿潰瘍は縮小します。しかし、退院し、通常の生活に戻れば、再び下腿潰瘍は悪化します。ですから、診断がつかないまま、年余にわたり、無意味な入退院や通院を繰り返されている患者さんが数多くいらっしゃいます。

 

静脈のうっ滞により下腿潰瘍を治すだけであれば、手術は不要です。弾性包帯とスポンジなどで、適切に潰瘍部とその周囲を圧迫すれば、1〜数ヶ月で潰瘍は治癒します。

 

下肢静脈瘤の手術を行うことが基本ですが、弾性ストッキングや弾性包帯を常時着用するのであれば、手術は患者さんの希望の時期まで延期可能です。

 

下腿潰瘍の治療は圧迫療法です。

以下にその治療の実際を示します。

 

1. 通常はソフラチュールという抗生剤入りのメッシュと潰瘍にあて、医療用のスポンジを2枚重ねとして、潰瘍に当たる大きさに切り、そのスポンジがつぶれるように弾性包帯を巻き上げています。
 
 
 
2.

通常の方法で軽快しない場合は、圧迫が十分でないことがおおく、わたしは、スミスアンドネフュー社のCo-Plus という特殊な包帯を使用しています。
治療方法は、潰瘍に感染がある時は、抗生物質入りの軟膏を、感染がないときは極く少量のステロイド剤が入った軟膏を塗り、ガーゼをあて、軽く通常の弾性包帯で巻き上げたのち、その上からCo-Plusを巻いています。Co-Plusは非常に圧迫性にとみずれないため、軽く巻き上げるだけで相当締まります。

 

Co-Plus はミスミプロミクロスサービスセンター(電話 フリーダイヤル 0120-343155)にて通信販売により購入できます。

 
 
 
 

実例
この患者さんは2年間にわたり下腿潰瘍で大学病院を含めた医療機関にて治療が行われましたが治りませんでした。娘さんがこのホームページをご覧になり、患者さんご本人が私の外来を受診されました。
極めて重症で、両下肢の静脈瘤から、色素沈着・皮膚の硬化を生じ、静脈のうっ滞による下腿潰瘍から、掌蹠膿庖症(両手・両足に生じる皮膚病)を生じ、そのうえ自家感作性皮膚炎(全身にかゆみを伴う発疹が生じる)を併発していました。この診断は2年間の間どこの病院でもつきませんでしたが、私の外来では即日診断可能でした。

 

2週間の圧迫療法の後、入院にて両下肢のストリッピング手術を行い、その後も患部の圧迫を併用し、下腿潰瘍は軽快しました。

 

ところが、3ヶ月後に再び湿疹が再発しました。これは深部静脈と表在静脈を結ぶ交通枝の弁不全で前回の手術では下肢の状態がひどく手がつけられなかったものです。この手術を予定しています。

  写真:患者さんの了解を得て、患部の写真を載せます
 

 

陰部静脈瘤

女性の陰部(大陰唇、膣内、その近傍)などにできる静脈瘤です。見た目が悪いと思われる方、性交渉時に不快感を覚えるか方が結構たくさんいらっしゃいます。場所が場所だけに、どこに相談して良いかわからない、はずかしい患者さんが潜在的に沢山いらっしゃるのだろうとおもいます。

原因は以下が考えられます。

(1)局所的なもの
(2)大伏在静脈の枝がそけい部から陰部に延び、それから派生した静脈瘤
(3)骨盤内の静脈(内腸骨静脈)の枝から派生した静脈瘤

治療法は

  1. 軽い静脈瘤は硬化療法で消失することがありますが、圧迫が十分に出来ない部位のため、下肢の硬化療法に較べれば、上手にできません。麻酔をして摘出する方法が比較的うまくいきます。
  2. 大伏在静脈の枝が静脈瘤の原因である場合には、この枝をそけい部の創から処理する必要があります。
  3. 内腸骨静脈の枝が原因の場合には、手術的に処理することが困難なため、そけい部の静脈(大腿静脈)からカテーテル(細い管)をいれ、内腸骨静脈までおくり、コイルなどで詰める治療を行います。

検査は

局所的なものか、大伏在静脈の枝・内腸骨静脈の枝から派生するものかの鑑別が大切ですので、陰部の静脈瘤を直接さして、造影剤を入れ、レントゲンで枝を確認します。

手術は

軽いものは、日帰り手術です。場所が場所ですので、中等症以上のものは入院がお勧めです。この場合は下着は脱いで頂いています。

結果は

内腸骨静脈からの枝が残っている場合は再発の可能性が高いです。硬化療法単独も再発の可能性が高いです。敏感な部分ですが、お産では結構な損傷を受けますし、お産時に会陰切開をしても問題なく治癒しますので、陰部静脈瘤の術後経過も比較的良好です。

 

まずは、受診してください。バリエーションの多い静脈瘤ですので、診察後に詳しい治療法をお話しします。

 
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