新見正則・白杉望による下肢静脈瘤のはなしと血管疾患のはなし このサイトについてサイトマップ
       
 

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[早わかり]下肢静脈瘤

はじめに

下肢静脈瘤はお年寄りの方々には”すばこ”と言う俗称で呼ばれています。下肢の表在静脈が拡張・蛇行するもので、重症例では皮膚に潰瘍を生じるまで悪化します。しかし、通常は進行も遅く、命にかかわる病気でもないために、医療従事者を含めて関心が薄く、正確な知識も少なく、多くの患者さんが無処置のまま放置されているのが現状です。

 

原因と症状

動脈血は心臓のポンプ作用で重力に逆らっても血流は維持できますが、下肢の静脈血は筋肉の収縮に伴うポンプ作用と静脈内の弁によって、心臓に戻っていきます。この弁が長年の立ち仕事・出産・遺伝的要因などで機能不全となったり、破壊された結果として、静脈の逆流が生じ、その結果、静脈が拡張・蛇行するのです。血液は動脈内を流れて栄養と酸素を運びます。そして、組織や臓器に行って、栄養と酸素を与え、二酸化炭素と老廃物をもらって、静脈のなかを通り心臓に戻ります。つまり、綺麗な血液が静脈内を走り、汚い血液が静脈内を走ります。汚い血液は肺・肝臓・腎臓で綺麗になり、また動脈血として組織や臓器に送られます。つまり、綺麗な血液が動脈、汚い血液が静脈です。みなさんの日常でたとえると、動脈は水道水、静脈は下水です。下水が足に溜まった状態が下肢静脈瘤です。トイレが流れない、お風呂の排水が悪い、キッチンの流しが汚れているなどを想像して下さい。そして、静脈血のうつ滞は、足のだるさの原因となり、その後、皮膚の色素沈着や潰瘍を生じます。

 

表在静脈

 下肢には筋肉内を走る深部静脈と筋膜と皮膚の間を走る表在静脈があります。深部静脈は下肢では膝の下から太い一本の本管となります。小指くらいのふとさはあります。また、そけい部より中枢では親指くらいの太さがあります。つまり深部静脈は静脈血を心臓へもどす高速道路です。この高速道路に相当する深部静脈があれば、極論すれば表在静脈はなくても問題ありません。

 

下肢静脈瘤の原因となるのは表在静脈で、通常は下肢の内側を上昇しそけい部にて深部静脈と合流する大伏在静脈、また下肢の外側から膝の裏で深部静脈に合流する小伏在静脈です。大伏在静脈 ・小伏在静脈とも通常は最大径が2から3mmです。

 

そして、95%の静脈瘤は大伏在静脈 and/or 小伏在静脈の拡張と逆流が最初の原因です。通常の下肢静脈瘤は発症には2段階必要です。まず、大伏在静脈 and/or 小伏在静脈が拡張し、逆流すること。そして、次のステップは、大伏在静脈 and/or 小伏在静脈の枝が太くなり瘤状になることです。

 

残りの5%は、表在静脈と深部静脈を直接に結んでいる穿通枝という静脈の弁の障害で深部静脈の血液が逆流する場合、また女性の出産後などにおこる骨盤内の静脈からの逆流が、その例外に含まれます。

 

治療

治療の原則は、血液のうつ滞を取り除くことです。溜まった下水を取り除くという印象です。静脈血は寝ていれば(心臓が足よりも同じか低い位置にあれば)重力で心臓に戻ります。一生寝ていれば、下肢静脈瘤になりませんし、また、現在あるかたでは、進行しません。
実際の治療は、簡単なものから、入院が必要でしっかりしたものまで以下のようなものがあります。

  1. 弾力ストッキング
  2. 硬化療法単独
  3. 高位結紮+硬化療法
  4. レーザー治療+高位結紮+硬化療法
  5. 日帰り伏在静脈選択抜去+硬化療法 (日帰りストリッピング)
  6. 伏在静脈選択抜去+静脈瘤切除+硬化療法
  7. 伏在静脈全長抜去+静脈瘤切除+硬化療法

治療方法については[詳細]下肢静脈瘤の治療の項をご参照ください。

 
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